長崎開催回(2020.1)レポート

【開催概要】

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[開催日]
令和2年1月17日(金)・18日(土)

[会場]
シーハットおおむら さくらホール

[募集定員]
400名(一般350名/福祉職従事者40名/学生・新任者10名)

[参加人数]
211名(一般125名/福祉職従事者36名/新任者8名/出演者15名/関係者27名)

[開催委員会構成法人]
社会福祉法人南高愛隣会・社会福祉法人ゆうかり・社会福祉法人はる・NPO法人さんえす・九州ネットワークフォーラム

 

【レポート】

[共通プログラム]

◎表現活動:プロの和太鼓演奏集団で“生きる誇りへの、挑戦”を活動理念とする瑞宝太鼓がオープニングを飾り、洗練され、かつ迫力に満ちたバチさばきと太鼓の響きで会場を魅了した。また、主力メンバーの高倉照一さんによる自伝の発表とソロ演奏に、大きな拍手が送られた。
2020.1長崎/表現活動

◎基調講演:実行委員会委員でNPO法人抱樸(ほうぼく)理事長の奥田知志さんから「いのちに意味がある~私たちは何を大切にしてきたのか~」をテーマに講演があった。最近起きた二つの事件(川崎・練馬)の背景にある「極端な自己責任論社会」が「迷惑は悪」という考えが孤立を助長しているという指摘があり、迷惑や困ったことがたくさんある地域のなかで多様な人たちがつながる共生社会を“大変を抱え込みながら”一緒に築きあげていこう、いのちに意味がある、生きることに意味がある!という第一の言葉で共生社会を語ろう、という提言があった。受講者に対して、やまゆり園事件の犯人が、世の中のために良いことをしたという確信の基準としての「生産性」についてのお話があり、「生産性の圧力」の元に生きている同じ「時代の子」として、事件を起こした彼に対して、あなたは何を語るのか?という宿題が出された。
2020.1長崎/奥田氏・牧野氏講演

◎映像&トーク:NHKスペシャル第6集「この子らを世の光に」(2007年3月放送)の上映と制作者の牧野望チーフプロデューサーのトークで糸賀一雄氏・池田太郎氏・田村一二氏の実践・思想と現代に受け継ぐ取り組みが紹介された。また、福祉の環境が整えば整うほど元いたところから遠くなるという皮肉な状況があり、やまゆり園事件の犯人は、支援が進んだなかで何かを感じて事件を起こしたのではないか、とのお話があった。

[研修プログラム]

◎中堅以上の福祉職従事者を対象とする福祉支援語り部養成研修には、36人が参加した。8テーブルに分かれ、各テーブルに1名ずつ配置のファシリテーターがサポートし、とんがるちから研究所の近藤さんがワークシートを用いて進行した。アイスブレイクによるメンバーの関係づくりから始まり、初日は、基調講演などを見て感じたこと、共生社会とは何かなどの個人ワークとグループでの共有。グループごとの発表のあと、助言者の岡部さん、丹羽さん、(社福)グローの齋藤誠一さんから講評があった。また、全育連統括の田中正博さんから事件発生の直後に「テレビが障害者はいらないと言っている」と怖がる人に安心してもらうためにテキスト資料の声明文が出された経緯について説明があった。寄せられたなかに「救われた」という賛同の意見があった一方、「障害者を甘やかすからダメ」「親は権利ばかり主張する」などの異論を唱える意見が文書や電話であったということや、施設職員や家族からの意見、国際育成会連盟会長からのメッセージの紹介があった。翌日の研修で、自分のなかでじっくりと掘り下げていくためにもテキスト資料を今晩読み返してほしいという宿題があり、初日の幕を閉じた。
2020.1長崎/福祉支援語り部養成研修1

二日目は、やまゆり園事件をどう受け止めるのか、全育連の声明への反応で各自が思うところをグループで共有。職場で取り組む基本理念普及のアクションプランを各自が考え、グループでブラッシュアップ。これらのセッションが行われた。
2020.1長崎/福祉支援語り部養成研修2

最終の講評として、助言者の岡部さんから、相模原事件について風化し始めているという意見、枠を超えて市民などと共生社会について語りあい、やさしさがある地域づくりを目指そうという意見、自分たちにも差別意識があることを認めるという意見などが、研修を通じて印象に残った。この二日間、言葉で思いを表すことの難しさを感じたと思う。モヤモヤすることを言語化することが大切。言語化し語りかけていくという研修の成果を持ち帰って、職場や地域で実践者としてアクションを起こすことを期待する、というエールが送られた。また、丹羽さんからは、「ちゃんぽんサミット」などご当地らしいプラン名があった。テーマが壮大なので何となく近づいたようで近づけないようなモヤモヤ感が増したと思う。奥田さんが紹介されるカイロス(相対的な時間の概念)が我々の仕事に近いことや、ミュージシャンで精神科医の北山修さんが重要とされるネガティブケイパビリティ(答えをすぐには出さず、とりあえず抱えておける力)が、共生社会を探る我々にとって必要な一番の専門性。糸賀語録に“自覚者が責任者”があるが、皆さんは研修で共生社会について自覚し、作成したアクションプランに取り組んでいく責任者となって欲しい、という言葉で締めくられた。

◎学生・新任者グループには、学生1名と新任者7名が参加。玉木幸則さんが進行し、御代田太一さんがサポートした。初日は、奥田さんの講演、瑞宝太鼓、糸賀一雄氏のビデオについての感想や残った疑問をシェアしながら、自己紹介。福祉にかかわった経緯は人それぞれ。「ストーカー加害者の事情を見て、福祉の世界に興味を持った」という方も。福祉の仕事に決めた後も、自分に合った職場はどこなのか、みんな悩みながら法人や職場を決めてきたことが分かった。
二日目は、2グループに分かれ、「福祉」「障害」といういつも使っている、でもその意味を深く考え直すことのない2つの言葉をテーマに、改めて自分たちの仕事や日々接している方々について自由に考える時間を設けた。玉木さんより、1時間半の講義。バリバラの映像や幼少期のエピソードを交えながら、「意思決定支援とは」「共生社会とは」を考えた。バリバラの映像のインパクトは大きく「自分の日々の支援を反省した」という声も多く出た。
2020.1長崎/学生・新任者

最後に、地元開催委員会の鈴木大輔委員(NPO法人さんえす共同代表)と田島光浩委員長(社福法人南高愛隣会理事長)から閉会の挨拶があり、全てのプログラムが終了した。
2020.1長崎/集合写真

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