岡山開催回(2020.1)レポート

【開催概要】

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[開催日]
令和2年1月22日(水)・23日(木)

[会場]
ピュアリティまきび

[募集定員]
150名(一般100名/福祉職従事者40名/学生・新任者10名)

[参加人数]
200名(一般105名/福祉職従事者28名/新任者12名/出演者22名/関係者33名)

[開催委員会構成法人]
岡山県手をつなぐ育成会・岡山県重症心身障害児(者)を守る会・岡山県知的障害者福祉協会・社会福祉法人旭川荘・社会福祉法人ももぞの学園

 

【レポート】

[共通プログラム]

◎表現活動:広島県で障害のある人と共に表現活動を行うNPO法人ひゅーるぽんのスタッフと演劇ファシリテーターおよび舞台芸術制作室“無色透明”代表の皆さんから、演劇クラブの練習風景などのビデオやスライドとトークでオープニングを飾った。続いて、香川県で支援学校の卒業生や関係者で「めざせよさこい参加」を合言葉に、お祭り大好き・踊りが大好きの“でけでけ隊”19名によるリズムに合わせたアップテンポの踊りのパフォーマンスに大きな拍手が送られた。
2020.1岡山/表現活動

◎基調講演:実行委員会委員で毎日新聞社論説委員として活躍された野澤和弘さんから「かけがえのないいのちの発信~福祉の思想の伝え方~」のテーマで講演があり、公判が始まったやまゆり園事件の犯人に関して、保護者の疲れ切った表情や職員の生気のない瞳を見て、重度の障害者には生きる価値がない、社会に不幸をもたらすことしか出来ない、という考えで犯行に至ったことの話があった。重度の障害がある息子さんとの30年来のつきあいにより、理解するのは難しいが決して犯人の言う“心失者”ではなく彼らの世界があることと、糸賀一雄氏が「重症の子どもたちは自分で光れないと考えられていたが、実は自分で光っていた。」「ちょっと見れば生ける屍のようだとも思える重症心身障害のこの子が、ただ無為に生きているのではなく、生き抜こうとする必死の意欲をもち、自分なりの精一杯の努力を注いで生活している。」と著書で述べていることの紹介があった。研修受講者へ「この子らを世の光に」という言葉で世の中に訴えてこられた糸賀氏の生きざまを学び、重度の障害がある人を通して人の生きている意味を今一度考えようという提言がった。

◎映像&トーク:NHKスペシャル第6集「この子らを世の光に」(2007年3月放送)の上映と制作者の牧野望チーフプロデューサーのトークで糸賀一雄氏・池田太郎氏・田村一二氏の実践・思想と現代に受け継ぐ取り組みが紹介された。障害者自立支援法の成立後に大臣が内閣改造で代わるときの記者会見が番組制作のきっかけとなったという経緯や、福祉の制度が整ってきた盲点にやまゆり園事件があるのではないか、とのお話があった。

[研修プログラム]

◎中堅以上の福祉職従事者を対象とする語り部養成研修には、28人が参加した。6テーブルに分かれ、各テーブルに1名ずつ配置のファシリテーターと経験を積んだ全国各地からの助言者がサポートし、とんがるちから研究所の近藤さんと(社福)昴の丹羽さんがワークシートを用いてテンポよく進行した。最初に、アイスブレイクによるメンバーの関係づくりがあり、初日は、基調講演などを見て感じたこと、共生社会とは何かなどの個人ワークとグループでの共有についての発表がグループごとに行われた。
2020.1岡山/福祉支援語り部養成研修1

発表のあと、WGメンバーでNPO法人脳損傷友の会高知理事長の片岡保憲さんから講評があり、翌日の研修に備えてテキスト資料を今一度読み返すようお話があった。また、メンターとして参加し、糸賀語録を作成した滋賀県社会福祉協議会の奥村昭さんから、全三巻の糸賀著作集を読み込み語録として88の言葉・文章を抜き出した経緯や、仕事などで困難に直面したときに語録に出会って元気になって欲しいというお話があり、初日の幕を閉じた。
二日目は、やまゆり園事件をどう受け止めるのか、全育連の声明への反応で各自が思うところの共有。問いを各自が考えその問いにグループメンバーが答え(語りかけ)を考える。職場で取り組む基本理念普及のアクションプランを各自が考え、グループでブラッシュアップする。これらのセッションが行われた。
2020.1岡山/福祉支援語り部養成研修2

最終の講評として、助言者の片岡さんから、各人が作成したアクションプラン案の特徴を紹介したのち、自身が受講生として学んだのち、立てたアクションプランに基づき地元で研修会を行った実践において、共生社会というワードにフィルターをかけた状況で話し合いをすることで、どんどん話が広がる経験をした、というお話しがあった。また、進行役を務めた丹羽さんからも、地元の自立支援協議会の研修などで共生社会について話し合う実践の紹介があった。さらに、答えをとりあえず仮置きしながら共生社会に向けて回答を出しつつ向かっていくほかない。奥田さんが紹介されるギリシャの時間概念のカイロス(相対的な時間の概念)が我々の仕事に近いことや、ミュージシャンで精神科医の北山修さんが重要とされるネガティブケイパビリティ(答えをすぐには出さず、抱え続けられる力)が、「誰も排除しない」共生社会を探る我々にとって必要な一番の専門性、というお話があった。糸賀氏の“自覚者が責任者”という重い言葉があるが、研修でいろんな気づきをし共生社会について自覚したことを持ち帰って実践をする責任者として普及啓発に取り組んでいただきたい、という言葉で締めくくられた。

◎学生・新任者グループは、12人が参加し、初日はファシリテーターに玉木幸則さんを招き、自己紹介と共通プログラムを振り返り、でけでけ隊や、ひゅーるぽんのトーク、野沢和弘さんの基調講演、糸賀一雄さんのビデオと牧野さんのトークについて、1つずつ感想や疑問を言葉にしながら、考えを深めた。障害のある人が人前に立つときに支援者のスタンスはどうあるべきか、自分の職場を踏まえてやまゆり園の事件をどう考えるか、糸賀一雄氏の残したものの先にどんな社会を目指せばいいのか、など自由な議論が展開された。
二日目は、3グループに分かれ、進行を玉木さんからWGメンバーで文化活動家のアサダワタルさんにバトンタッチし、「福祉とは?」「障害とは?」をいろんな角度から議論した。午後は、野澤和弘さんの講演にも出てきた「生産性/経済性」というキーワードについて、更に深掘りして議論するところからスタート。その後、アサダさんが関わってきた現場支援に表現の視点を混ぜ込む取り組みについて映像や写真とともに紹介し、最後には2日間の感想を共有してグループワークを閉じた。
2020.1岡山/学生・新任者

最後に、実行委員で地元開催委員会の仁木副委員長から閉会の挨拶があり、研修参加の皆さんが研修の成果を持ち帰って、語り部として活躍できるよう一層精進されることを期待する、というエールで全てのプログラムが終了した。
2020.1岡山/集合写真

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