ミニフォーラム(兵庫・高知・沖縄・宮城)レポート

【開催概要】

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[開催日/会場/受講者数(計:33名)/当日参加関係者数(計:39名)/協力・協賛・共催等]

《兵庫》 令和2年10月7日(水)/西宮市総合福祉センター/5名/9名/(社福)西宮市社会福祉協議会

《高知》 令和2年10月16日(金)/高知県立ふくし交流プラザ/8名/11名/(社福)西宮市社会福祉協議会

《沖縄》 令和2年10月21日(水)/沖縄県総合福祉センター/7名/8名/(社福)西宮市社会福祉協議会

《宮城》 令和2年10月27日(火)/エル・ソーラ仙台/13名/11名/(社福)西宮市社会福祉協議会

 

9月の鹿児島を皮切りに今年度の共生社会フォーラムが始まりましたが、新型コロナウイルス感染拡大の収束が見えないなかで、どのようにすれば安心・安全なフォーラムができるのか、実行委員会委員の意見をいただくとともに、ワーキンググループでプログラム内容、実施体制等について検討し、従来の集合型で一般参加者も募る2日間の共生社会フォーラム(4会場)の開催と、分散・別途進行型で一般参加者を募らない1日の福祉職等研修(通称”ミニフォーラム”4会場)を開催することとなりました。 今回は、10月の第2週から毎週1回、全国5ブロックのうち関東・甲信を除く4ブロックで開催した福祉職等研修の実施概要を報告いたします。

 

【事前学習】

共生社会フォーラムの一環として開催した福祉職等研修会は、従来の集合型フォーラムで一般参加者と研修参加者の共通プログラムとして、実際に視聴する「表現活動」「基調講演」「NHKスペシャル・ラストメッセ―ジ第6集この子らを世の光に」に代わって、事前のオンラインによるビデオ学習をこなして当日のグループワーク研修に臨むこととなりました。直前に受講申し込みされた方は、計4時間のビデオ学習やテキスト(ほほえむちから抜粋版)・テキスト資料(糸賀語録50選、やまゆり園事件に関する全育連声明後に寄せられた市民の声・判決文・神奈川新聞社記者座談会録など)を読み込む時間に追われて大変だったというお声をいただいています。

【グループワーク】

各会場では、参加人数に応じて、グループ編成を1から3グループとし、メンター経験者で本年度に開催した事前研修会に参加した滋賀県の奥村さん、高知県の片岡さん、埼玉県の下里さんが全体進行者としてデビューしていただき、研修プログラムを開発・改良したNPO法人とんがるちから研究所の竹岡氏または近藤氏がサポートしました。メンターは、今後の語り部育成や地域主体のフォーラム開催を企画できる人材確保のために、できるかぎり開催地や同一ブロックの方に担っていただくこととしましたが、地元での確保が難しい会場には、強力な助っ人として埼玉県の岡部さんや丹羽さんに入っていただきました。助言者は、同じブロックの滋賀県の大平さんが駆け付けたり、メンターの丹羽さんや岡部さんが兼ねたり、あるいは、全育連の久保会長にビデオ出演していただくなど、3か年蓄積されてきた“共生”人財の力をお借りしました。

 

ーーー兵庫ーーー

【①-1 兵庫会場で奮闘していただいたメンター・受講者の皆さん】

【①-2 兵庫会場の助言者等の皆さん】

【①-3 兵庫会場の助言者によるコメント】 助言者:大平眞太郎さん

・第1セッション「共生社会を考えるディスカッション」では、模造紙・ポストイットを使った「共生社会と呼べる状況・呼べない状況・どちらともいえない状況」の導入で、特別支援学校、オリンピック・パラリンピック、身近な商店街などの例示があり、「あまり難しく考えず、自分の身近なところから」「どちらに位置付けるとすれば、その理由を説明できるようにする」「こういう状況が作れたらどちらでもない状況に区分される、といった議論を」という助言がありました。
・第2セッション「やまゆり園事件に対するさまざまな意見から多様な考え方と“違い”を理解し、自らの感情の源泉を探るともに、理解できない自分とは反する価値観を含み、自己矛盾や葛藤により答えに窮する“問いかけ”を言語化し、共感のためのいくつもの“語りかけ”を言語化するワーク」では、「できるだけ身近なところの発想で」「利用者さん、そのご家族、あるいは同僚の後輩や先輩から問いかけられたこと」「その時は何か答えたが、考えるとなかなか難しい問いであったとか、その時に答えられなかったこと」「今回は、難しく考えてほしい」という助言がありました。
・研修の最後に、「糸賀思想からもう1回学び直すことで、今私たちがやっていることを整理しやすくなる」「難しいテーマをしっかりと難しいというように考えて伝えることが大事」「共生社会とは、誰かだけに責任を押し付けない社会を作ること」「そのことを自覚して、責任があると思う人が1人でも増えてほしい」と総括いただきました。

 

ーーー高知ーーー

【②-1 高知会場で奮闘していただいた受講者の皆さん】

【②-2 高知会場のメンター・助言者等の皆さん】

【②-3 高知会場の助言者によるコメント】 助言者:丹羽彩文さん・川西大吾さん

・第1セッション「共生社会を考えるディスカッション」では、丹羽さんから「フォーラムを行う場所によって、同じカードでも置かれる場所が違ったりする。なぜかというとそれぞれが出てきた背景が違うから。それを出したことで、また違う人も意見が議論の呼び水になっている。それによってまた共生社会について考えるということがとても重要」という助言がありました。
・第2セッション「やまゆり園事件に関して、自らの感情の源泉を探り、答えに窮する“問いかけ”“語りかけ”を言語化するワーク」では、丹羽さんから「グループのメンバーが窮している問いかけに、何とかこう語りかけを返すということを生み出していただきたい。」「綺麗に書かなくて大丈夫。つらつらと理路整然と語るというよりは、思いつかなければ、キーワードでよい」という助言がありました。
・研修の最後に、1月に開催する全体フォーラム&共生社会フォーラムin岡山で語り部研修を運営していただく川西さんから「支援員さんであったり、家族であったり、当事者であったり、人であったりいろんな人からの声かけに窮するとき、その背景がどこにあったのかなということを考えるのも一つの大切な要素」「友達とか家族など福祉にあまり携わってないという人たちの素朴な疑問が、直球すぎてなかなか答えられないということも結構ある」「悪気があって言っているのではないが、浅いところでの誤解であったり、勘違いからくることがあったりする。共生社会というのは深いところももちろん大切だが、そういう悪気のないフラットな人の誤解や勘違いを取り除き、理解をする人を増やしていくということも大切」という助言がありました。

 

ーーー沖縄ーーー

【③-1 沖縄会場で奮闘していただいた受講者の皆さん】

【②-2 沖縄会場のメンター・関係者の皆さん】

【③-3 沖縄会場のメンターによる発表、受講者によるアクションプランの発表】 メンター:水流源彦さん

・第1セッション「共生社会を考えるディスカッション」では、水流さんがメンターを務めるグループで「宗教」「動物の世界」「ゆいまーる」「24時間テレビ」「入所施設」などについての意見交換があり、「宗教は、誰にでもわかり易いものである一方、宗派が主流であったり宗教により戦争が起こったりするので対立関係にあるのでは」「動物の世界をどう考えるのか。我々人間も自然の中で動物として生きていけば共生社会ではないか。一方、弱肉強食で強いライオンに食べられる動物がいる。」「入所施設も、暮らしたいその本人はどう思ってるかということで、結果的には、結婚・育児ができる社会に向かっていくのであれば、あってもいい」などが報告されました。
・第2セッション「やまゆり園事件に関して、自らの感情の源泉を探り、答えに窮する“問いかけ”“語りかけ”を言語化するワーク」では、水流さんのグループで「奥田さんの話を聞き、植松死刑囚の裁きについて、社会を振り返ると、とてもモヤモヤが積り違和感を持つ。振り返るとしてもライフステージのなかでどの時代を振り返るのか、それが家庭の中なのか、就職してからの現場なのか」「実際、現場の中で、モヤモヤして辞めた人もいるし、それに対してどのように声かけして良いのかわからない。今、私のところも含めて人が足りない。時間的余裕があればいいのか、給料が上がればいいのか、それで人が増えればいいのか。その先に、もしかしたら虐待が起きてしまったかもしれない」などの意見交換があったことが報告されました。
・第3セッション「自分の職場をイメージして語りの場を実践するためのアクションプラン作成」では、精神障害について一般市民に、共生社会について新入社員や若手の同僚に、発達障害のある人のグループホームを設置しようとする地域の人(コロナ禍で経営に苦しむ不動産会社の社長さん)に、保育園・幼稚園・学校に、作業療法士に、事業所の職員や家の娘さんたちに伝えたいという発表があり、沖縄の共同体「ゆいまーる」というタイトルで広げたい、という地元ならではの発表もありました。

 

ーーー宮城ーーー

【④-1 宮城会場で奮闘していただいた受講者の皆さん】

【④-2 宮城会場のメンター・助言者等の皆さん】

【④-3 宮城会場の受講者によるアクションプランの発表】Cグループ4人の例(竹嶋メンター)

・実行可能なアクションプランを、ということで、ちょっと背伸びできる位を目指してみようか、ということで皆さんに作っていただいた。ネーミングに悩んだり、対象の方の課題の設定などに少し苦労したのかなと思う。(受講者)
・対象者は、職場の支援員に限らず様々な職種とした。研修で得たことを共有し、より客観的な視点を持って支援にあたるということを目的に、皆で熱く語り合いたい。今年度、2回から3回実施したい。
・作業所での創作活動による彼らの作品をもっと世に出したい。支援に入っている職員に専門ではないのでどうしたらいいのか分からないという気持ちがあるので、語りの場を設けたい。 ・最初、職場のスタッフを対象としたが、「もう少しハードルを上げて」という助言があったので、今、支援しているひとり親家庭も対象とした語りの場を設けたい。目指す方向としては、自分と違うことを受け入れること。自分と違うところを排除してしまうと、支援しやすい人とそうでない人とを分けてしまう。それを防ぎたい。
・地域の関係機関を対象にしたいが、まずは、自分の施設内で共有し、徐々に関係機関をプラスする。職種によっては、答えが出なくて自己肯定感が低く、なかなか自分の意見を言えない人が多いので、いろんな人の考え方や価値観に触れて自分の意見も伝えるという経験ができる場にしたい。

今年度のフォーラムがコロナ禍のなかで、日程が遅れながらも9月の鹿児島でスタートし、10月の福祉職等研修が成功裏に終えることができたのも、新たなプログラムの内容を検討し、実施を支えていただいた実行委員会やワーキンググループの皆さんと、全体進行者・メンター・助言者等の運営者や受講者のおかげですが、何よりも絶大なご支援ご尽力をいただいた地元協力法人・機関の皆さんのおかげです。言葉では言い尽くせませんが、心から感謝を申し上げます。

最終の宮城会場で地元開催委員会の遠山委員(社会福祉法人なのはな会)により、今回の地域分散型の研修の締めくくりに相応しい素晴らしい閉会挨拶をいただきましたので、掲載させていただき報告といたします。

 

現地法人の代表といたしまして、一言ご挨拶させていただきます。 本日は、長時間にわたり、研修お疲れ様でした。奥ゆかしいと言われる東北人がこの場に集い語り合えたことで、本当に良い一日を過ごせたと思っております。
私自身がそうですが、この仕事に携わっていると、模範的な回答を自分に持ってないといけないとか、正しいことをやらないといけないとか、そんなことを思うことがとても多くあります。しかし、どこかで反面、自分が語る一般的なその答えが、現実に目の前で起こっていることに、かなり大きな齟齬を生じているということも自覚してまいりました。
昨年、岩手県で本研修に参加し、その中で改めて自分は誰のために何を語ってきたのかということを考えるきっかけをいただいたのがこの研修だったと記憶しております。
今日の研修では、ご自身の心の奥底に蓋をしてしまっているけれども、決して捨てることもできない、そんな思いをアウトプットしていただきながら語ることで、新たな自分を発見したり築いたりすることができた時間になったのではないかと思っております。
今日の語りは、あくまできっかけです。この体験を是非語り部として、皆さんの周りの方とシェアをしていただき、私達の仕事の本質である人の幸せを作るために、支援を必要とする方々の存在の理由を語り合える東北の街になっていければ嬉しく思います。本日ご尽力いただきました近藤さん、下里さん、そしてアドバイザーの皆さん、メンターの皆さん、さらに糸賀一雄記念財団の皆様、本当に遠くからいらっしゃってくださりありがとうございました。御礼を申し上げます。また皆さんと、今度は現場でお会いできることを楽しみにしております。
簡単ではございますが、ご挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。

takecomai